理念・ミッション
- 経営理念
企業活動を効率化し便利にする
2020.06.22
代表取締役社長
小方功ogata isao
企業活動を効率化し便利にする
当たり前のことを正直に行って信頼を得る
1993年に個人事業主としてスタートし、2006年にマザーズに、2016年には東証一部に上場した株式会社ラクーンホールディングス。EC、フィナンシャル事業の分野においてサービスを提供し、企業活動の効率化を通じて世の中に貢献する企業です。
同社は組織づくりにおいて、多様なメンバーの個性や能力の発揮のため様々な取り組みを行い、「働きがいのある会社」ベストカンパニー賞、「ホワイト企業アワード」オフィス環境部門・女性活躍部門での表彰など社内エンゲージメント分野で高い評価を得ている企業でもあります。
今回取材を行ったのは同社の代表であり、現在では、東京商工会議所主催の創業塾で講演を行うなど、各方面で引っ張りだこである小方さん。29歳で会社を辞め、独立準備を始めたものの、お金、人脈、経験がなく、100万円でラクーンを創業。様々な苦労を乗り越え、一部上場企業のトップとして活躍されるようになった苦労人。
その小方さんの大切にする考え方を伺うことで、経営数字面・社員エンゲージメントを両立している同社の成功哲学を垣間見ることができました。
生まれも育ちも北海道でして、母の話をよく聞いていたことが記憶に残っています。商売人としての哲学は、母との会話を通じて多大に影響を受けていると感じます。
私の母は私に「勉強をしろ」と言ったことは一度もありませんでした。その代わり「自分の力を何のために使うか考えなさい。金持ちになることに使う人生より、誰かを幸せにするためにその能力を使いなさい。」と教えをもらったのです。確かにそういう人生の方が良いと思ったことは、今でも私の心に残っています。
今でも、ずば抜けて優秀と思う人に出会った際にはこの話をします。商売の世界は運次第なところもありますが、もし幸運にも能力を持って生まれたのであれば、誰かを幸せにしようとする決意もぜひ持っていただきたいです。
若いうちはもう少し、自分の欲求に正直でも良いと思います。社会のため、世の中のためを、目的の真ん中に最初から置いて、前のめりに頑張る人もいますが、そういう人たちで成功をしている人をあまり見たことがありません。マズローの考え(※)もありますけれど、欲求は徐々に進化をしていくべきで、まず食べたい、モテたいといった、自分に正直なものでも良いと思います。変に着飾るよりも自分に正直で良いのです。
※マズローの考え
アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したもの。
私自身も一部上場の企業へと育てるまでに変化、進化をして今があります。今は社会的な大義を負うべきです。ですが初めから社会のため、ではなく徐々に徐々に変化、進化をしていけば良いのです。最初は、シンプルな欲求と付き合うことをお勧めします。それから、少し身近な人の幸せを考えたりしていけば良いのです。
当たり前のことを行って、信頼を獲得していくこと。信頼を得ることに注力することが大切です。自分を信じた人を後悔させない。人としてその人をがっかりさせない。とはいえ信頼を得ることはすごく当たり前でとても大変なことです。その信頼は、能力や技を磨かなければ得ることができません。相手にきちんと貢献をすることができなければならないですし、そのための実力がなければ始まりません。
実は物事がうまくいかない背景には、そこに大きな課題があることが多いと感じます。もし何かうまく行かないことがあれば、周囲のせいにし、何か近道はないかと探すのではなく、目の前の相手に対して何ができるのか、どうしたら信頼を得ることができるかと考えてください。そして相手に貢献するために考え、実行をしてください。変に近道を探すのではなく、能力や技を磨きながら、当たり前のことを正直に行って信頼を得ることが大切です。私の人生もまた、その積み重ねです。
私はもともと、建設関係のコンサルタント会社に勤めていました。その経験を踏まえても、当時から日本の土木建築技術はとても優れたものを持っていると感じていました。スカイツリーを見てもとんでもない技術力です。日本は空港もダムもすべて世界の三本指に入るような技術を持っています。
建設コンサルタントとしての将来も考えましたが、インフラ開発は当時成熟期だったうえに自分一人で生きていく力を身につけたい、そういった思いを抱いていた私は自分で事業を行おうと思いました。過去に流通の分野を詳細に分析した人がいないようでしたので、ならば理系の発想で、科学して挑もうと考えました。(編集部注:小方さんは北海道大学工学部を卒業)
きちんと理論を立てて、それを試し、反省し、また改善し試す。そういった当たり前の努力をすることができれば、すごく面白いことのできる余地があると感じました。それがこの事業を始めるきっかけです。
そう考えると少々難しくなるのですが、見方を変えると自然界と比べ、人間界はいびつな点が多いです。例えば人間界ではミミズが好きな人は少ないと思いますが、自然界ではミミズがいなくなると、土を耕す生物が少なくなりバランスが崩れます。皆が役割を持ち、相互に支え合っているのです。
事業も同じで、社会の中で何か役割を果たせば良いのであり、どこかの産業における何かのいびつな点、課題を見つけ解決することから始まります。そこから唯一無二のサービスをつくれないかと考え、世の中の第一人者となるサービスをつくることが大切です。
私は流通分野の課題は何か、日本の流通のあるべき姿とは何か、考え込みました。そしてその後、ITを用いて問題解決ができることに気づき、1998年頃に複数のECサイトを立ち上げることで、具体策を世の中に示すことができました。これがマスコミに紹介され、世間から注目されるようになりました。
起業は2種類あると思います。一つは経験を生かした起業。年配の方はこちらです。もう一つは0から行う起業。体力と元気のある方はこちらです。もちろん私は後者でした。そして、私は起業をする際に、経験・人脈・お金の3つがない状態でした。ですから最初は生きるために、家賃を払うことが第一目標でした。最初はそれくらいの目標で良かったのです。ビジネスモデルは10年かけて作ろうと決めていましたので。
いつの時代でもある分野におけるビジネスの成功者はその分野の専門家でもあるのです。専門家を目指しながらも、私にとって初めての領域ですから初めからうまくいくわけがないのです。大切なことは業界の問題点・課題点を肌で感じながら、解決の仮説を立て、試して、改善して、を繰り返しの試行錯誤をしていくことでした。
私はまずインポーター(貿易商)としてスタートしたのですが、目の前の人に貢献できるよう他にも様々なことを行いました。小さな会社のネット事業の立ち上げを手伝ったり、欲しいと言われたものを見つけて仕入れたり。そしてすべて「儲けた利益の半分だけ下さい」と提案をして行いました。これによって次第に仕事も増えていきました。相手の信頼を得るために、できることを正直に行ったのです。
経営理念を決めることで重要なことは、事業領域を設定することです。事業領域を設定するということは、行わないことを決め、やるべきことを指し示す、選択と集中の作業です。それにより、この会社を好きになった人たちが、この会社の将来のためにどのような努力をすれば良いのか分かりやすくなり、理念に向かい主体的に走るようになるのです。
私たちの目指す理念は、企業活動を効率化し便利にする、そのために必要とされるものを提供し続けることです。その理念に向かい、お客様の課題と向き合い、私達だからこそできることにこだわりながら事業を展開しています。
理念に基づいて行えることはまだまだたくさんありますし、ブルーオーシャンの領域も存在します。私は、グループの将来のために好奇心旺盛な若いメンバーの提案を採用し、実行の支援をしていきます。
また、自分の人生は一回切りです。何か世の中に不要なものをつくったり、無理矢理に何かをつくらされるような人生ではなくて、本当に誰かが喜んでくれる「こんなの欲しかった、ありがとう」と言ってもらえることをした方が、やりがいが生まれます。またやりがいというのは、どんなに高い給料よりも、自分のポテンシャルを上げてくれます。それはすごく幸せなことと私は思います。
【補足】理念に基づきサービスを手掛ける同社。次世代に期待をし、その挑戦は続く。
私が最初の経営陣達に話したのは、会社から差別をなくすことと、謎が一切ないガラス張りにすることでした。例えば私の友達ということで恩恵を受けるような景色が彼らの前にあるとすれば、社員は当事者感覚を持つことをやめてしまいます。
私は結果に比例しないすべてのものを差別と呼んでいます。古い人間が大手を振って偉そうにして、新しい人に肩身狭そうに働かせてしまっていれば、それも差別です。差別は一例をあげると、成果に対する報酬の不透明性を生み、人のやる気を阻害します。
またガラス張りでなく、どこか不信感・謎があれば、一人一人の責任感を削いでしまいかねません。例えばお神輿は4人で担いだらさぼった人はすぐに分かります。ですが大勢で担ぐほど、さぼっているひとが誰だか分からなくなります。組織が大きくなるほどに一人一人の責任感の意識が薄れていくのです。
当事者意識の例をあげますと、昔行っていた研修で、みんなでドライブして、食堂に行きました。メニュー表を見ると、カレーライスも、とんかつもあるのですが、「すいません、カツカレーありますか」と聞くと、「すいませんやってないです」と言われます。ですが別の日に、違う店員さんに同じ質問をすると、「出来ます」と言われます。カレーが500円で、とんかつが500円で、カツカレー1300円です。するとお店は儲かりますし、私たちも満足できます。
この「できます」と答える人は、店主の娘さんなのですが、娘さんと他の店員の違いがまさに当事者感覚なのです。自分の会社、自分のお店と思うので、当然お客様のためになることをする。正しいと思うからまっすぐ実行にします。その当事者のある文化をつくるために、差別をなくすこと、謎の一切ないガラス張りにすることを意識しています。
私は経営者の役割について「キャンプの言い出しっぺ」という言い方をします。キャンプの言い出しっぺのように、目的地だけ言えば、後はみんな自分の得意な仕事を自主的にやってくれると思っています。みんな「これやります」「あれが得意です」と言い、各人ができることを自分でみつけて、自分の一番得意なものに対して手をあげてくれるのです。
【補足】同社はエンゲージメントに関する表彰も獲得している。
Grate Place To Work® Institute Japanが主催する『働きがいのある会社』ランキングで、2017年より3年連続ベストカンパニーに選出
一般社団法人ホワイト財団より、ホワイト企業として認定
ヒューマンリソースと言う言葉がありますけれど、人間にはそれぞれ持って生まれた能力に違いがあります。ある人は話が上手、ある人は文章力に長けている、ある人はイラストが得意、ある人は計算が得意といった感じです。
なぜ違いがあるのかと若い人は悩み、考え方の違いでトラブルや悩みの原因になることもあります。ですが私はいろんな課題を解決するために、それぞれ違った役割分担をできるよう違う能力をもって生まれてきたかもしれないと考えています。
どんな人間にでも天職があり、それを探す努力がすごく大事なのです。役割を決めて、点数や順位をつけるのではなく、各人が得意なものを自然と発揮できるように組織をつくることが大事です。
誰にでも幸せになる権利があります。実は私はエンジニアとしてそれほど優秀ではありませんでした。相当低い評価でノイローゼになりそうなぐらい悩んだこともありました。それが、その会社を辞めて商売を始めると、こんなに幸せになったのです。ちょっと言い過ぎかもしれませんが、それは、他の人にも起こりえることなのです。
フィールドを変えて走ってみる。石の上に3年っていうのはちょっと長すぎる。石の上は1年ぐらいで良いです。どんどんジョブローテーションをして、職種を変える。未だ誰も気がついていない隠れた能力をそうやって見つければ良いのです。人は優劣のように上下には並ばずに、横に並びます。そうやって人の持っている能力を探す努力をすることがすごく大事だと思います。
管理職向けには、リーダーとして必要な項目をピックアップしたオリジナルのマニュアルを用いて各項目について互いに点数をつけ合い評価をする、という研修を行っています。評価軸となる項目自体は、当時部長全員で話し合って、何度も意見を交わしながら決めました。52個の完璧な項目を選び出した自信があります。
評価をする際には部長が年に1回集まって全員で投票を行い、最終的に6分野に分けた5点満点のレーダーチャートの形で見える化をされます。例えば、経営に必要な能力ですと、説明する力。相手に対して上手に分かりやすく説明する力がない人が経営を行うと、メンバーが困惑してしまいます。他にも、経営者は理想がないとダメですからそれを問う項目や、専門性を問う項目があります。お互いに正直に点数をつけあって、その結果を、透明性を持ってお互いに共有をします。
一方で20人近くの多くのメンバーがいるため、お互いに詳しくは分からない人も、もちろんいます。ですがこれも自分を省みる良いきっかけになります。点数上は真ん中の3点がつくのですが、全部3がつくということは、誰にも知られていないということです。
余談ですが、私のレーダーチャートの面積を超えている人が3人います。これは悲しくも嬉しくもあります。みんなが支持しているという意味であり、このレーダーチャートは後継者の材料にもなります。やはり創業者ですから、みんなで交流して切磋琢磨して、理想を追求したいですし、レーダーチャートを見ながら、自分たちの現在地点について語り合うことはとても大事な光景です。
組織規模が大きくなると、今までは問題なかった考え方や仕組みがうまくいかなかくなる、と言われることがあります。私はその考え方自体が成長の邪魔になると思います。矛盾したように見える2つを得て初めて成功です。会社が成功する、奥さん・家族とも仲が良い。昔からの友人との関係もちゃんと持っている。そういう人が成功していると人と言えます。一見矛盾した2つを得るという発想で考えを始めることが大切です。
世の中に伝えたいこととして、当たり前のことを正直に行って信頼を得る。そのために技や知識を身につけ実力を得る。そんな気持ちを大事にしてもらいたいと考えています。また、私は部下に相談するタイプの経営者です。徹底的に相談します。「経営者は孤独」という言葉もありますが、私は違います。何でも話します。
「リーダーとしての威厳が」「支持率の維持のために」、と話す人もいますが、そのために必要なことは内緒にすることではありません。弱みも悩みも全部見せたうえで、「本当にこの会社をよくしよう」と思う気持ちを相手に抱いてもらえるかどうかを考えることが大切であり、みんなが私をリーダーとして認めてくれる心の奥底からの気持ちは必ずそうやって生まれると信じています。
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