理念・ミッション
- ビジョン:100 年先も続く文化創造を目指して、土地と地域・人がつながる場をつくる
2020.10.09
CEO
石山高広ishiyama takahiro
100 年先も続く文化創造を目指して、土地と地域・人がつながる場をつくる
2016年に創業した株式会社ワールドパークは遊休地の不動産活用、公的資産の活用を行う企業であり、稲毛海浜公園の再開発を担っています。「SUNSET BEACH PARK INAGE」と名称変更をするように稲毛の美しい夕日をコンセプトに据え、開発を進めています。
同社の魅力的な点は、公園を地域活性化の起点と考えていること。アメリカのブリックリン・ブリッジ・パークのように、人が集まる場所、地域文化を育む場所、地域産業が生まれる場所、として公園の可能性を見出しているのです。稲毛海浜公園再開発のコンペを圧倒的な評価で勝ち抜き、地元住民からの期待を背に受け、経済産業省からも千葉県の地域活性化事業を行う企業として認定されるなど、その新たな挑戦は、具現化に向け動き始めています。
ビジネスモデル上、一人が圧倒的成果を出したとしてもビジョンは実現しないもの。企業をビジョンの具現化に向けた一つのチームとして成立させるために代表の石山さんは何を意識して組織運営をしているのでしょうか。また壮大なビジョンを実現するために、現実的な点でどのような戦略を描いているのでしょうか。
アメリカのブルックリンにあるブルックリン・ブリッジ・パークをご存じでしょうか。今でこそ有名な観光地ですが、30年前に私が訪れた際には港のコンテナ化に伴い用途を失った倉庫街でして、非常に治安の悪い街という印象でした。ですが、2002年に公園として再開発され、寂れた倉庫街は魅力的なウォーターフロントになったのです。
日中はカップルがテイクアウトしたコーヒーを手に散歩をし、家族連れが芝生の上でのんびりと憩いの時を過ごしています。マンハッタンの対岸という立地を生かし、自由の女神のシルエットを夕日とともに味わい、夜はニューヨークの摩天楼を楽しむことができます。また倉庫をリノベーションしてオフィスに活用するなど、“らしさ”を生かしている点も素敵です。現在は地元の人だけでなく、観光客も多数訪れ、年間数百万人の訪問者数があるとも言われています。
<夜のブルックリン・ブリッジ・パーク>
このように公園は地域活性の起点となると感じたことが現在の事業を始めるきっかけとなりました。一方で私たちの日常のすぐそばに公園があるにも関わらず、特別な存在とは言えません。新しい商業施設が生まれる度に話題となり多くの人が集まるのに、どうして公園はそうならないのか。公園にはもっと可能性があるはずです。ブルックリン・ブリッジ・パークのモデルを日本でも再現したく、2016年12月にワールドパークを設立しました。
公園はもともと人が集まる場所ですので、発想としては決して奇抜ではなく自然です。またブルックリン・ブリッジ・パークを見て刺激を受けた後、世界中の様々な公園を訪問しました。すると海外の公園では単に人が集まるだけでなく、リアルな人間関係を育むコミュニティとして機能し、地域の文化を育む場として位置付けられているように感じました。
私たちは「休日にどこへ行こうか」と考えた時に、有名な観光地や少し離れた人気スポットのことをまず考えてしまいますが、地元近くの公園に行き家族で一日を過ごしたり、地元の知り合いと過ごしても良いはずです。そうした時間の中で、地元の魅力を味わい、ますます地元を好きになっていくことが地域活性の重要な一要素です。一方で地域コミュニティの喪失や質の低下といった言葉があるように、厳しい現実があります。
結局そうなってしまうのは、日本の公園に魅力がなく、ポテンシャルを最大限に発揮できていないからです。都市計画の中で、公園は必ず盛り込まれるものですが、実態として地域の人が集まりたくなる公園、地域の文化を育める公園は少ないです。また収益性がないため公園を開発できず、魅力が磨かれず、悪循環となっているように感じます。
一つが公園の独自採算の実現、もう一つが地元の特に若手世代の巻き込みです。まず公園の独自採算の実現についてお話ししますと、現実問題として公園の維持管理にお金がかかります。日本では税金で自治体が何とかするという認識が強いですが、地方財政がひっ迫し、公園の維持管理もままならない現実の中、魅力的な公園にしたくても動けません。
成功したブルックリン・ブリッジ・パークでは、アメリカの寄付の文化による、お金持ちの人だけでない地域の人の寄付金を土台として、ローラースケートリンクやバスケットコートといったアクティビティの一部利用料、飲食店や商業誘致による収益を確保し、一定の資金を得ています。そして得た資金を開発に回して良い循環をつくっているのです。
また長期的な発展に繋げるためには地元の特に若手世代の巻き込みが必要です。商業的に成功したとしても、地元の人の暮らしの一部として公園が存在しなければ、結局衰退していきます。地元の人が他所に行くのではなく、地元で仕事し、家族を持ち暮らしていくことが地域活性の土台です。その実現に公園を生かして行うのです。
もちろん地元の人にボランティア的に手伝ってもらうのでは、現実的でありません。20年後を見据え、地元の人が地元を盛り上げられるようにするために、公園を次の世代が新しい産業を生むプラットフォームのような存在とし、財政面でも地域に貢献できるようにします。大手のデベロッパーが手を付けられていない壁ですので、とてもチャレンジングです。
その通りです。公園自体の独自採算を実現すると共に、公園を地域産業を生むプラットフォームとするためには、既存のデベロッパー的な概念では厳しく、ESGマーケットを狙いながら進めていく必要があります。資本を持っている大企業の力をうまく借りて、ESG関連の予算を使ってもらうことで、物事を加速的に進めていきます。
※編集部注:ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉
ESG市場は世界で3300兆円あるとも言われ、日本の大手企業も参入を狙う中で、まだ上位企業は少ないです。大手企業が取り組みをしようにも例えば地域貢献の分野で、地域を盛り上げる産業の創出を実現するモデルが少なく、多くの企業が模索をしています。そこで当社が公園を軸としたモデルケースをつくるのです。その切り口から進めることで、様々な企業と連携をしながら、稲毛海浜公園の再開発を進めることができるようになりました。
もちろん、地域に根差した企業もたくさんありますが、収益を出し地域への還元や地元の若い人を巻き込むところまでいく、再現性のあるモデル構築ができているわけではありません。公園が変わり、街が変わり、産業が生まれ、企業が成長していく、そして地域が活性化していく姿の実現は、日本の産業発展の新しいモデルにも繋がっていくのです。
独自採算、地域産業創出、雇用の創出、地域コミュニティの創出、地域文化の起点、そういったものを永続的に実現する。地域活性を公園を軸に実現するモデルケースはまだ存在しないので、私たちが提示をしていきたいです。そういった思いもあり、パークテックというビジネスモデルづくりを進めています。再現性のあるものとなり、一つのビジネスモデルとなる。そして横展し、国内・海外の多くの公園文化活性化のために挑んでいく。それが私たちの目指すものです。
当社のビジョンは「100年先も続く文化創造を目指して、土地と地域・人がつながる場をつくる。」です。100年経った先に当たり前となっている、世界に誇れるような公園文化、そのビジネスモデルを日本発で作っていきます。実は国土交通省からも注目をしてもらい、経済産業省からも千葉県の地域活性化事業を行う企業として認定されました。地元の人からの期待も大いに受けています。その期待に応えるために、着実に事業を進めていきます。
きっかけは会社をつくって3か月目の頃でした。「100 年先も続く文化創造を目指して、土地と地域・人がつながる場をつくる。」という目指すビジョンに向け、幅広く探していたところ千葉県からのプロポーザルを見つけ、この機会を逃してはならないとすぐに応募をしました。10数社ほどのコンペとなりましたが、結果的に圧倒的な評価をいただき受注することができたのです。
「自分たちの街にこんな可能性があったのか」「ここまで変わることができるのか」と地元の方々から高い評価をいただいたことは、自信となりました。皆さん、自分たちの街に対してある種の諦めに近い感情を持っていたように感じます。住宅を買われたのが30年前でお子さんは独り立ちし夫婦での暮らし。再開発が進む街もある中で取り残され、とはいえ自分たちで行政に働きかけることもできない。その中で、地域活性化のイメージの沸く提案をできたことが大きかったです。
「SUNSET BEACH PARK INAGE」という名称に変更するように、稲毛の魅力的な夕日を生かした公園にしていきます。地元の方と「20年後でも変わらない稲毛ならではのもの」について話した際に、「県外から来る人にも夕日を自慢したい」と綺麗に落ちていく夕日を想起される方が多かったことがヒントになりました。
今までは砂浜にパラソルや海の家がなく、プールとビーチが離れているなど、夕日どころか海を味わうことを生かせていない状況でした。最大の魅力である夕日を軸にして、「SUNSET BEACH PARK INAGE」という名前から想起されるような落ち着き・チル・寛ぎ・儚さ・ロマンチック・トワイライトをブランドの表現として創造していきます。
例えば夕日をより映えるものにするために、砂浜を真白なホワイトサンドに入れ替えたり、桟橋を築造しカフェやピアを設置することで夕日を最大限に味わえるスポットをつくります。他にも宿泊を通して自然を味わえるプログラムやサービスを用意し、稲毛の自然をラグジュアリーに体験できるようにしたり、みんなで集まれるグランピング場を設け、屋外型のイベントも楽しめるようにしたりと、ユニークなコンテンツがミキシングされる新たな都市型リゾートパークとして開発中です。
体験の共有を生むことです。人は良いものを見たら共有したくなる傾向があります。美しい夕日を見て自然とSNSで共有し、それを見た人が訪れるようにしたいです。またそうやって稲毛の魅力を知り、新しい人がこの地に住んだり、事業を始めるようになることを通じて、地域が盛り上がっていく光景をつくりたいです。
人が集まり、経済が回り、地域が活性化し、また人が集まる、そのサイクルを生むために、体験の共有がカギとなります。稲毛に来たら皆が幸せになる。その幸せを誰かに伝えたくなる。それをつくるのが私たちです。
そうは言っても私たちが勝手に進めるようなものでは決してありません。私たちが行おうとしていることは、地域の人たちの「稲毛の魅力を引き出すために、ちょっとこれ欲しいよね」「これがあったら嬉しいな」を磨いて、具現化する作業です。では今までなぜそれができなかったのかというと、多くの規制により踏み込むハードルが高かったのです。
例えば稲毛海浜公園の年配の利用者は、犬を飼っている人が多いというデータがあります。一方で現状のままでは規制があり一緒に公園に来ることはできません。そこで他の利用者に配慮はしつつも、地元の年配の方が楽しめるように、公園内にドッグランや、ドッグパークを作っていく計画も現在進めています。一般的に犬に対する公園側の規制は非常に厳しいですが、ここでは全エリア可能として、一日中楽しめるようにします。
このように現実的なことも考慮しながら、皆さんの「あったら良いな」を具現化していきたいですし、そのために様々な規制を乗り越えていきます。県外の方も1000円・2000円払っても一日中楽しめるのであれば、訪れてくれるようになるはずです。そうやって採算性を確保し、安全面などを含めて実現性が見えれば、きっと多くの公共施設も取り入れたくなるはずです。他に先駆けて成功事例をつくっていきます。
公園以外にも日本全国に魅力的な施設があり、そこで楽しめることはとても良いことです。ですがわざわざ高いお金を出して、遠方まで行かなくても、近場で気軽に楽しめるような施設がもっと増えて良いはずです。公園をもっと身近な、それでいて充実感を味わえ、その体験を他に人の思わず共有したくなるような存在にしていきます。
実際に人が集まり、地元の人が活性感を味わえ、千葉市の財政にも貢献していけば、国内の多くの自治体が模倣するにようになるはずです。また公園文化がないのはアジア圏全体ですので、今後アジア圏を中心とした海外にもぜひ模倣してもらいたいです。
今は未来のことばかり話していますが、完成した際には稲毛海岸にぜひ来てください。「ふらっと寄れる近くの公園」「親子で一緒に楽しめる」「友人と恋人と」「おじいちゃん、おばあちゃんと」「おもいっきり遊べる」「おもいっきり寛げる」老若男女の誰もが、多様で豊富なコンテンツによって愉しむことが出来る本当の意味でのスーパーパブリックな空間が皆さんを待っています。誰かに共有したくなる、また行きたくなる。理屈では語れない、何か本質的な体験が皆さんを待っています。もちろんその際には夕日をぜひ味わってもらいたいです。
私自身はこれまで東京でビジネスを行ってきまして、初めて千葉で仕事をする中で、地元の人の地元愛を、社員の稲毛を盛り上げたい気持ちを強く感じています。その気持ちの尊重と、チーム感をいつも意識しています。
気持ちの尊重についてお話しますと、創業前のキャリアでは「俺がプロデューサー」といった感じでしたが、ワールドパーク創業からは全く逆でして、現場の子たちがプロデューサーです。そのプロデューサーたちが自発的に動けるように、原動力である地元愛や入社時のモチベーションの具現化を支援することが私の役割であり、事業の発展のために大切です。
そう考えた際に、会社のビジョンやビジネスモデルや投資への回収は私が考える必要がありますが、他は社員に任せています。大きなゴールを共有できていれば、そこにいく方法は各々で決めた方が、機能的に組織が動けるはずです。
私たちはビジョンの実現に向けたチームであり、チーム全体として成果を出していくことが必要なビジネスモデルです。「誰かが突き抜けた成果を上げてそれで会社の売上を支えています」では成り立たず、ビジョンに到達しません。「100 年先も続く文化創造を目指して、土地と地域・人がつながる場をつくる。」というビジョンに向けて、お互いに協力し、お互いの力を引き出せ、自分の力をチームの目標実現に役立たせる意識が大切となります。
チーム感というと、各々が所属する部署でのチーム感をイメージする人もいますが、役職・階層ごとのチーム感、部署や役割ごとの横のチーム感、横断的な斜めのチーム感、全てにおいて機能しているかどうかを注視しています。目標に対して全員が同じ方向を向いているのか、苦労しているメンバーがいればフォローをしているか確認をしていますし、自分のテリトリーをつくってそこに留まったり、誰かの支援を断るようなことは、決してあってはいけません。
結果で判断をしています。一方でチームに成れているか、チームとしての結果を出せているか、その点も考慮しています。これだけ大変な世の中にあって、個人の結果はその人の力量だけではどうしようもないことも多々あるはずです。個人の結果で評価はしますが、チームとして結果を出すために周囲をフォローすること、誰かを助けにいく姿勢が大切です。
そのような思想のもと個々人は、チームの成果に対して割り当てられたKPI的な明瞭な目標を持っています。売上やいわゆるアウトプットのようなものはチームとしての結果なので、個人に割り振られた役割をもとに指標をつくっているのです。それに加え、チームとしての貢献度を360度評価に近しいような形で模して評価しています。
また年齢に関係なく評価・昇進できること、仕事をする上で年齢による影響をつくらないことが当社の特徴です。若い方でもチームにとても貢献している人がいますし、年配の方でもとても頑張っている人がいます。年齢的要素とチームへの貢献度は関係ないものです。純粋にチームへの貢献で評価しています。
様々なバックボーンの人たちが、同じビジョンに向けて取り組んでいることです。代理店やアパレル、番組制作といった様々な分野の方が参画をしています。それにより異業種の知見や発想が関わることで、公園の可能性がとても広がっている実感があります。
皆それぞれに思いがあり、どうすれば稲毛を盛り上げられるのか、公園の魅力を最大限にできるかと、提案をする人が多いです。社員の中には地元で育って人もおり、昔から稲毛で遊んでいて「このプールがこうなればいいのに」「BBQをしている時にこんな施設があればいいのに」と原体験をもった意見を持つ人もいます。様々なバックボーンを持つ人と、地元での生の体験がある人とが、意見を交わしながら、ビジョンに向けて協力しあっている点は当社らしさです。
<同社社員によるビーチクリーンの様子>
実はそれが良いシナジーを生んでいます。私たちが思いをもって取り組むことで、地元の方々を中心に「自分たち街づくりに参加して良いのだ」と私たちに協力してくださったり、地元で働く選択肢を考える方が増えています。当初は住民説明会を行う中でも「お前らみたいな小僧に何ができるのか」と試されていたように感じますが、現在では応援してくださる方が増え、ローカライズをキーワードに参画してくださるようになってきました。
今はベンチャーなので、まず地元の方、行政、利用者、あらゆる人から会社として信頼を得ることが大切です。そうして私たちがこのパークテックモデルを完成させたうえで、次は他のパークテック事業者やその関連事業者を支援できるような立場を目指していきたいです。そのためにも私たち以外の人でも実現できるよう、ビジネスモデルだけでなく、組織運営モデルも再現性のあるものにしていく必要があります。
様々な壁がありますが、困難を社員と乗り越えてモデルケースをつくり、次の世代の人が引き継いで実現できるようにしていきます。お金儲けを目指すのではなくて、地域の産業を活性化させ、地元の若い世代の雇用を生むような、軸である地域活性化事業であること、その先にあるビジョンを胸に、社員とともに頑張っていきます。
理念・ミッション
社名
代表
事業内容
遊休地の不動産活用、公的資産の活用、リニューアル、運営受託、不動産投資・開発
設立年
社員数
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