理念・ビジョン
〇ビジョン
働くひとと組織の健康を創る
2020.06.15
代表取締役CEO
山田洋太yamada yota
取締役CTO 兼 人事部長
石野良朋ishino yoshitomo
働くひとと組織の健康を創る。カンパニーケアの常識を変える
2011年に創業したiCAREは企業の健康管理分野において、並みいる大手の競合を抑え、今まさに飛躍を遂げている企業です。
現在、サイボウズ株式会社や大東建託グループなど、290社、9万人以上の導入実績を獲得し、同社の代表的なサービスである健康労務システム「Carely(ケアリィ)は、企業の健康管理業務の作業時間を4分の1にまで効率化することで貢献しています。
その強みはワンストップで網羅的な機能とサービス改善のスピード。そして、それを実現する組織づくり。今回は現役の産業医でもあり、「働くひとと組織の健康を創る」というビジョンの元、この事業を立ち上げた代表の山田さんに、創業の思いやサービスの強みを伺いました。
そして、最高の組織をつくりたいという思いから同社に参画した、CTO兼人事部長の石野さんに、組織づくりの観点を中心にお話を伺いました。
(山田)2歳上の兄に憧れて医学部を目指していました。我が家は決して医者家系でなく、普通のサラリーマン家庭です。イケメンで、頭も良い、そんな兄に負けたくないと思っていただけでした。
医学部に入ってからのモチベーションは、目の前の患者さんです。やはりプロとして仕事をしているので、目の前の患者さんを良くしていくために努めていく必要があります。いかに患者さんに寄り添い、病気の改善を行えるか、医者の存在意義を感じており、原動力の一つでした。
(山田)他人のために、と話すと言葉が大げさかもしれません。私にとって利他は、自分のためでもあります。とはいえ、大学生の当時から他人のために何ができるのかということを意識していました。例えば大学では、学生が学生に教える形での100人規模のワークショップを行いました。
ワークショップを始めた背景を話しますと、周囲が勉強していないことに疑問を持っていたところに、1学年上の先輩から「ワークショップをやらないか」と声を掛けられたのです。始めた当初は、勉強をしない学生が多い中で「なぜ彼らは勉強を頑張っているのだろう」と、周囲から疑問を持たれていたと思います。ですが、良いことを行っていると徐々に参加者が増えていくのです。いつの間にか学内で一大ムーブメントになっていきました。
最初は自分の成長のために行っていました。参加者数が10名、100名と膨れ上がっていく中で、利他精神的な要素がより強くなっていったのです。参加者数が増える中で、参加する当人のために自分は何が提供できるのか、と考える機会が増えていきました。後輩が困っていたら絶対に声をかけしますし、誰よりも早く声をかけます。その積み重ねで、いつの間にかたくさんの人が参加するようになっていました。
(山田)周りから驚かれるのですが、私は子供の頃兄に頼ってばかりの甘えん坊で、何をやっても出来ないタイプでした。また、私はそれほど頭が良くないタイプです。例えば私の周りにいた医学部のメンバーや医師は、とても頭が良いので、情報処理も素早く、何かを読んだらすぐにインプットされます。私は人の3倍努力しないと同じ事ができないと感じていました。だから3倍努力すると決めて、実行してようやく同じスタートラインに立てるのです。
それが生きたのでしょうか。初めからできる人は人の苦労に気付きづらいものです。私は苦労の過程を通じて、人が出来ない理由が分かります。ですから出来ないことを早く感知して拾いあげ、解決することが逆に得意になりました。それが今の強みとなっています。
(山田)卒業後、沖縄県立中部病院を経て久米島の公立久米島病院で研修を行っている際に、病院の経営数字に興味を持つようになりました、その際にたまたまMBAの解説本に触れて、慶應義塾大学ビジネス・スクールへ進んだのです。そして在学2年目、クリニックでアルバイトをしていた際にきっかけがありました。
私は内科医なのですが、内科的に問題がなくとも、症状としてめまいや腹痛がある患者さんがいました。そして、心療内科に移動し、実際に診察をすると、1日に来る患者さんのうち、70人中40人がメンタル不全で、その8割が就業者でした。
それから企業の中で、健康管理を行うはずの産業医がなぜ機能していないのか疑問を持ち、同時に産業医の魅力に取り憑かれ、「働く人の健康管理という領域で何かできるはずだ」と思い、起業をしました。(編集部注:山田さんは今も現役の産業医)
(山田)私の人生を振り返ると、自分の関わる人が才能を開花することに喜びを感じるのだと思います。「人の良いところを引き出してやる」という気持ちが強くあります。
その気持ちが芽生えたきっかけが、大学生の時にありました。兄という憧れの対象がいて、何をやってもできないと思っていた。それが大学時代のアルバイトで塾の講師をしていた時に、教えていた学生から「先生、こんなに良い点数が取れたよ」と大喜びで報告をもらいました。あの瞬間に私はコンプレックスが解消されたのです。
私でも、人に何かを教えるとその人が成長して、その人が何かできるようになる。その人が嬉しい気持ちになり、自分も嬉しい気持ちになる。そこが原点なのでしょうね。その経験から、自分が良いと思ったことは必ず行った方が良いですし、それで自分も幸せになると思うようになりました。大学時代のワークショップでもそれが生きたと思います。良いことだからやろうと。
会社を始める時にも親から猛反対があったのですが、自分が良いと思ったのだから信じて必ずやろう。そういう思いでした。改めて省みると、関わる人の才能開花の力になりたいですし、行った方が良いと思ったことは信じて行いたい。そこに自分の存在理由があるのかもしれません。
(山田)そもそもカンパニーケア(Company Care)という言葉は私が作った造語です。順に話しますと、一般的な言葉となっているセルフケアは、自分自身の健康に注意して健康行動を起こすことです。大切と分かっていながらも非常に難しいと思いませんか。そもそもそれができないから多くの人が悩むのです。そしてセルフケアがうまくいかないので医療機関のお世話になります。それがメディカルケア(Medical Care)でして、セルフケア→メディカルケアの流れです。
ですが視点を変えてセルフケアの上流は何かと考えると、その人がいる環境に依存する健康づくりです。人は自分の努力不足で不健康になっていると考えがちですが、属する環境も大きな影響を与えます。その環境の一つである会社(company)から、カンパニーケアの発想を抱きました。カンパニーケア→セルフケア→メディカルケアという流れの中で、上流を何とかしようという発想です。
(山田)感じている課題をシンプルに話しますと、20年後、30年後の日本の医療は、今と同じサービスを提供できるのか疑問を持っています。私の子供世代や孫世代に、今と同じように3割の診療費負担で、病院や医療機関に受診ができるかと言えば、その前提となる医療皆保険制度の存続が厳しく難しい状況です。そういった中で、間違いなく私たちの世代で変えていくことの一つが健康づくりです。
病気は、病院にかかれば健康になると考えるのではなく、その手前にある自らの健康づくりにも着眼が必要です。病院だけに健康を依存するのではなく、個人が意識して健康を保つことが必要です。現状の医療レベルを保つためにも、誰かが違う形で病院じゃないところで健康をつくるということを仕組みとしてつくらないといけないのです。
そのためにも、病院じゃないところで健康をつくることが出来ることを証明する。それがiCAREの存在意義です。ですから、今は手始めとして、Carely(ケアリィ)というサービスで頑張っていますが、将来的には厚労省や様々な機関を動かして、巻き込んでいきたいと考えています。とはいえ時間がかかるので、まずはここからということです。
(山田)実はCarely(ケアリィ)自体は、世の中においてすごく新しいものではないと考えています。紙ベースで動いていたものやデジタルデータでもばらばらに保管されていたものを、すべてクラウドシステムで一元化するというものです。今までやっていたことに対してテクノロジーを生かすことで、業務効率などの新しい価値を生んでいくのです。その中で私たちの強みは、ワンストップで網羅的な機能やサービス改善のスピードです。
強みの一つであるワンストップで網羅的な機能については、情報の一元管理から、専門家集団(臨床心理士、保健師、看護師など)が、チャットを通じて健康に関するアドバイスを行い、従業員のケアまでワンストップで行えるという、他にはない機能を持っています。機能自体はあっても、情報として一元管理できないサービスはありますが、健康診断、ストレスチェック、過重労働、産業医面談の記録など、網羅的に行えるサービスは弊社のみです。
今後は収集できるデータを生かし、体調の予測機能や個人の健康に対するコメント機能など、網羅性をさらに拡張させていきます。これからも他を追随させない強みとして磨いてまいります。
2つ目はサ-ビス改善のスピードです。これは私たちの最大の強みです。競合他社がお客様の要望にすぐに改善できるかと言えば、私たちほどのスピード感ではありません。今の時代はスピードが求められている以上、そのスピード感が顧客満足に繋がっていると考えます。
またシステムは、導入しても使うユーザーにとって有用性があり、使い勝手の良いものでなくてはいけません。機能だけでなく、デザイン性、使い勝手の良さ、現場への導入のしやすさ、そういった観点も含めて、石野を筆頭にカスタマーサクセスチームやエンジニアチームが非常に頑張ってくれています。
(石野)エンジニアメンバーをはじめ、ユーザーときちんと接点を持ち現場感を持ったうえで、改善しているところではないでしょうか。
一般的に、エンジニアはユーザーとの接点が少なくなり、どうしても机上になりがちです。一方で現場感を持っていなければ、ユーザー視点でのサービス改善の発想が生まれづらかったり、自分がユーザーのためになると思って行ったことが実際にどうだったのか仮説検証すらできず、本当に良いものはつくれません。ですから、弊社ではエンジニアであっても、現場の話を聞きに行くことを当たり前にしています。エンドユーザーの声を実際に聞きながらサービスを開発しているのです。
エンジニアも自分のつくったものに対して、実際にユーザーからフィードバックがくることでモチベーションに繋がります。自分がつくったものがどう生きるのか、ユーザーからどう感じられるのか、実際の声をもとに改善していく。それがサービス開発に良い循環を生み、モチベーションを生み出しています。
(山田)自分がつくったものが、これだけ世の中の価値を生み出し感謝されている。答えは現場にあるはずなのです。ものづくりのメンバーからすると嬉しいことではないでしょうか。石野の考えのもと、組織にモチベーションがあり、実際に実行できる。それが最大の強みでしょうね。このようなユーザー視点での開発によってCarely(ケアリィ)が最高なプロダクトに日々進化しています。専門家や人事の方にも「すごく良いサービスですね」と言われる確率は明らかに高くなりました。
(山田)やっとスタートラインに立ったという段階です。これからもっと導入社数を増やさないといけないですし、導入社数を増やすことだけが目的なのではなくて、Carely(ケアリィ)というサービスを通して会社・世の中の課題を解決していくことが大切です。
既存分野に限らず、新しい挑戦も社内で進めております。最終的に「健康管理と言えばCarely(ケアリィ)」となるような世界観を作りたいです。また日本だけではなく、数年後には東南アジア含めてグローバルへの展開を視野に入れています。そのためにも自分自身が成長をしていく必要があります。社会、メンバーとの約束を果たしていきながら、愚直にスピード感を持って行っていきます。
(石野)心理的安全性をとても意識しています。これはメンバーに意識させるというよりも、まず経営者・部長陣が強く意識して行動をしています。弊社には、ビジョン・ミッション・クレド・キーバリューと存在しますが、クレドにもそんな思いを込めています。
〇Vision:働くひとと組織の健康を創る
〇Mission:カンパニーケアの常識を変える
〇Credo:楽しまなければプロじゃない
・自分にフタをしていないか
・仲間に愛があるか
・家族に誇れるか
〇KeyValue:満足したらプロじゃない
・スピードは上がらないか
・クオリティは上がらないか
・視座は上がらないか
SaaSサービスではお客様に良いサービスを提供するために、チームが一体となってサービス開発を進めることが大切です。といはいえ100点にこだわると物事が進まないため、課題意識やスピード感のバランスを取りながら進めることが肝心となります。
そのためには開発に必要な情報を自由に発信し議論できる環境や、疑問に感じたことを相談しやすい環境づくりが必要です。そこで心理的安全性を提供する組織づくりにとても力を入れておりますが、弊社も60人を超える段階。中々に全体への浸透が難しくなる段階ですので、KeyValueを見直すなどして改めて組織としての動きを見直しながら取り組んでいきます。
(石野)浸透効果が大きかったと思うのは、週一の全社員が参加する全体定例です。もう2年ほど行っています。一週間に1人ずつ今週の出来事をもとにクレド自慢をします。「誰々さんがクレドのこの項目で、こういう取り組みをして、すごくチャレンジをしている」といった感じです。
こういった取り組みは自然と浸透をさせていくことが大切です。そのためにも覚えやすいようキーワードのようにシンプルにして、自然と考えが入るように工夫しました。それを全体定例の場でも繰り返し発信することで、浸透したのではないかと思っています。
週一で一時間、お互いが何をやっているかを伝える場があるので、自然とアンテナが立ちますし、お互いに感謝・承認を伝える場になります。仕事は孤独になりやすいものですが、孤独は個人の成長も事業の成長も阻害してしまいます。人間ですから誰かから認められた、感謝された、そう感じられることが大切であると思います。それらがうまくかみ合って、改めて効果の大きい取り組みなったと思います。
(山田)今までスポットライトの浴びていなかったメンバーが注目されるなど、良い仕組みになっています。他にも「Good Job Carely」という取り組みがあります。これはシステム上で感謝のバッジを渡すようなもので、賞賛や承認を伝える仕組みです。もちろん今までいろんな仕掛けを行い失敗したものもありますが、心理的安全性をつくるために石野を筆頭に頑張ってくれています。
(山田)経営陣でのディスカッションを大切にしています。経営陣が一枚岩にならないとかわいそうなのは、その下のメンバーです。経営陣の話していること、その土台となるアンテナの方向性を揃えるために、面と向かってざっくばらんに話せる機会をつくっています。特に議題は設けないのですが、自然と様々な話が飛び交います。
あとは多様性をとても大事にしています。不確実な世の中で、スタートアップだからこそ、様々な価値観を持つ人間がそれぞれの感性を生かし、能力を発揮することが大切です。弊社では今後に向けたグローバル採用も意識し始めるなど、性別・年齢・宗教・国籍などバックボーンに関係なく、多様性を生かした組織づくりを行っております。
金太郎飴のように同じような人ばかりを集めるのでなく、様々な感性の人が存在するからこそ気付ける付加価値を大切にしたいです。周囲にも良い影響をもたらしますし、それはお客様にも伝わることもあります。実際にそういったシーンを幾度となく目の当たりにしてきました。そして様々なバックボーンの人が気持ちよく働けるように、社内の備品一つであっても意識しながら、環境づくりをしています。
(石野)他に一例をあげるならOKRの取り組みです。2年前にサービス開発の方向性の的を絞り、推進力を高めるために始めたものがOKRです。着手したいことが山ほどありましたが、チームとしての方向性を明確にしながら、他の人の作業も把握できるようになり、組織に合う施策になりました。
また、半期ごとに全社員が振り返りを各自発信するような機会をつくっています。社員が60人ほどいますので、3時間くらいかかりますが、社内全体の透明性が生まれ、お互いに切磋琢磨でき、OKRの良さを生かせているのではないかと思います。
※詳細はぜひ石野さんのブログも参照ください
〇石野さんのブログ ※OKRに関して
・始動時 https://icare.hatenablog.com/entry/2018/07/23/122641
・振り返り https://icare.hatenablog.com/entry/cto_20200402
(石野)50人の壁が今まさに来ているところです。今の経営陣だけでなく、私たちの次の世代をどう育成していくかが課題です。組織の土台は出来てきましたので、みんなに「頼むぜ」ってところです。
仕事に対する姿勢、スキル、スピード、品質、あらゆる面でもっと強くならないといけません。メンバーだけでなく、私たち自身もまだまだ足りません。メンバーを引っ張っていけるチームリーダーを中心に、もっともっと成長していかなければいけません。
私たちは、全ての人々に健康な生活を送ってほしいですし、同じ時間仕事をするなら社会に大いに貢献できるサービスを作りたいと思っています。組織の成長を通じて、さらに良いサービスを世の中に提供してまいります。
理念・ビジョン
〇ビジョン
働くひとと組織の健康を創る
社名
株式会社iCARE
代表
代表取締役CEO 山田洋太
事業内容
設立年
2011年
社員数
60名
売上
非公開
所在地
〒150-0044
東京都渋谷区円山町10番18号マイキャッスル渋谷JP 201
企業HP
受賞・表彰歴
出版物
「Chatwork株式会社」へ |