「JAGGAER ONE」がひらく、調達部門がヒーローになるまでの道筋(JAGGAER ONE ロードマップ発表イベントinアメリカ レポート)【後編】
「JAGGAER ONE」がひらく、調達部門がヒーローになるまでの道筋(JAGGAER ONE ロードマップ発表イベントinアメリカ レポート)【後編】
今回のコラムは前回に続き、JAGGAER ONE紹介の後編として、昨年にアメリカ・サンディエゴで開催されたロードマップ発表イベントへの参加レポートをお届けします。前回は、主にS2C領域のIT化によって可能になること、またJAGGAER社およびその製品であるJAGGAER ONEの概要について触れましたが、今回はイベントの中身として、JAGGAER ONEのアップデートのポイントをお伝えできればと考えます。
今回のイベントは、アメリカはサンディエゴのSheraton San Diego Hotel & Marinaで、2日間にわたって開催されました。
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イベント概要(JAGGAER REV 2019)
場所:サンディエゴ、アメリカ合衆国
期間:2019年10月2日―3日
URL:https://www.jaggaer.com/rev/
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正確な来場者数は公開されていないものの、目測では1,000-1,500名程度が参加していたと思われます。当時のCEO・Rob Bonavito氏(現CEOはJim Bureau氏、2019年10月就任)のオープニングセッションによると、前年度の同イベントより30%参加者数が増えたというコメントがありましたが、どのセッションも立ち見が出るほどの盛況ぷりで、JAGGAER ONEに対する期待の高さが伺えました。
Opening Sessionでスピーチを行う前CEO・Rob Bonavito氏
■データ蓄積プラットフォーム・業務基盤としての魅力度向上
今回のイベントで示されたJAGGAER ONE の製品ロードマップにおいては、「Automated」(自動化された)、「Augmented」(示唆を与える)、「Simplified」(シンプルな)、「Adaptive」(状況に即応できる)というキーワードが繰り返し語られ、RPAやchatbotによる自動化、AIによる各種分析機能の強化(予測値や示唆・オプションの提示)、誰でも直感的に利用できるシンプルなUI、機能やモジュール間の連携強化といった、主には既存モジュールの利便性の向上に主眼を置いたアップデートの方向性が示されました。
一方、今回のイベントにおいて一貫したメッセージとして際立っていたのは、データ蓄積プラットフォームとしての魅力度の向上です。
企業のDX推進状況として、「約70%の企業が、データをうまく活用できていない」という調査結果を引き合いに出しながら、データを蓄積することの重要性が繰り返し語られ、蓄積したデータを分析し、その後の具体的なアクションまでシームレスに繋げることができるデータ蓄積・業務基盤としての魅力をアピールしていたのが印象的でした。
ここで特筆すべきは、従来各バイヤの経験・ノウハウに基づいた属人的なオペレーションになりがちであった直接材のS2Cについても対象範囲としており、サプライヤや契約に関する種々のデータを、企業の共通財産として蓄積・共有が可能であるというJAGGAER ONEの特徴は、主に間接材を対象としたSAP AribaやCoupaにはない独自の強みである、という点です。
■3rd partyの情報サービスとの連携強化による「持続可能な調達」への対応
さらに、昨今ではSDGs/ESGといったキーワードに代表されるように、企業活動に対する「持続可能性」への社会的な要請の高まりとともに、調達部門に対しても、「持続可能な調達活動」が求められる時代になっていますが、JAGGAER ONEは、そのような調達部門に求められる新たな役割を下支えするプラットフォームとして、「3rd partyの情報サービスとの連携強化」を方向性として掲げています。
既に、代表的な米・企業調査会社のDun & Bradstreet社や、riskmethods社(米・リスク調査会社)等の複数の情報サービス企業とのパートナーシップ締結を発表しているほか、一例としてecovadis社(仏・CSR調査会社)との連携を例に挙げると、ecovadisの対象サプライヤのCSR観点での審査結果をJAGGAER ONE に連携し、自社が実施したQCD等の観点でのサプライヤ評価結果と組み合わせて表示・複数サプライヤ間で比較したり、審査実績がないサプライヤについては、JAGGAER ONEのUIから直接ecovadis社に対して当該サプライヤの審査を依頼・審査結果の閲覧ができるなど、シームレスな連携を実現しています。
総括すると、JAGGAER ONEは調達業務全体をフルカバーする垂直統合型のプラットフォームとしての利便性の向上に注力するとともに、3rd partyの情報サービスとの連携強化を今後ますます加速させることにより、より包括的なデータ蓄積・業務基盤としての位置づけを強めていくものと思われます。
■現地で感じた、「持続可能性」に対する意識の差
さて、JAGGAER ONEとしての製品ロードマップについて現地で見聞きした内容としては以上になりますが、今回のイベントに参加する中で最も日本との差を感じたのは、「持続可能性」に対する調達部門の意識の差です。
自社のサプライチェーン全体に責任を負う部門として、これまで以上にサプライヤに対するコンプライアンス・CSRや、BCPをはじめとしたリスク管理の重要性が高まっている状況について、日本企業では「余計な仕事が増える」「本来の調達部門の仕事ではない」というようにネガティブに捉えられがちな一方で、現地ではそのような機運の高まりに対して、「調達部門がヒーローになる時代が来た!」というように、企業における調達部門のプレゼンス拡大のチャンスとして極めてポジティブに捉えられていたのが印象的でした。
「調達部門がヒーローになる時代が来た!」というセリフと共に、
会場は盛大な歓声と拍手に包まれた
このような「持続可能な調達」という新しい調達部門の役割については、具体的な企業の取組みなども交えながら、改めて弊社としての見解をお伝えできればと思います。
それではまたお会いしましょう。
アンカービジネスコンサルティング株式会社
調達・購買コンサルティングチーム
記載されているJAGGAER ONE等の固有名詞は、各社の商標または登録商標です。