調達部門・購買部門のあり方 Google編(前編)
調達部門・購買部門のあり方 Google編(前編)
今回は前・後編に分け、これからの調達部門に求められることを、実在する企業であるGoogleの事例を下敷きとした切り口でお伝えします。
GoogleやAmazon、Appleといったプラットフォームを提供するIT関連の企業は、ビジネスや社会のあり方を変える存在ということで注目を集めており、日々アップデートされるその事業戦略やサービスに関しては、企業自身による公開情報はもちろん、ネット、書籍、新聞など様々なメディアを通じ情報を得ることができます。
一方で、調達・購買に限りませんが、これらの企業の内側のオペレーションがどうなっているのか、踏み込んだ情報は調べてもあまり情報がない状況です。今回、たまたまGoogleの調達部門のリーダーTim Jones(Head of Strategic Sourcing)をゲストとしたインタビューセッションにおいて、そのオペレーションや経験してきた変革に関する言及がありました。2016年のインタビューですが、決して今日の文脈に遅れる内容ではなく、これからの調達部門に求められることとしての学びがあると考え、その内容を引用しつつ弊社調達・購買チームの考えをお伝えいたします。
(Learn How Google’s Strategic Sourcing Team Became A Trusted Business Partner, With Tim Jones Of Google. by Philip Ideson January 12, 2016
|https://artofprocurement.com/google/)
Googleの調達部門の方向性の変化
Googleの創業は1998年、今でこそ数多あるグローバル企業の中でも時価総額でトップクラスに君臨していますが、当然最初からそうだったわけではなく、段階的な成長のステージを経ています。
Tim Jonesもインタビューの中で、企業規模が10倍単位で成長するのと合わせ、調達部門の責任や、関与するプロジェクトの増加に合わせた機能の強化、S2C、戦略的なソーシングへの取り組みなど、多くの企業がそうするように取り組んできたと述べています。
しかしある日、調達部門が関与する案件、つまり調達カバレッジを拡大させていった結果、調達部門がトランザクション偏重のRFP shop(見積依頼部門)になり、コスト低減は実現できても、ビジネスへの本質的な貢献ができていないことに気づいたと言います。またその状況をGoogleらしくない、と考えたとあります。
その時からGoogleの調達部門は、Googleの哲学(*1)であるユーザー視点に立脚し、自らの役割をRFP shopからTrusted Adviserへと変え、社内のプロジェクト・ステークホルダー(ユーザー部門)、そして顧客のニーズを理解し、本当に必要なサポートの打ち手を考えて打つことをミッションとしました。
(*1: Googleの哲学:ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる
|https://www.google.com/about/philosophy.html)
このGoogleの取組みにおいて特徴的なことは、限りある調達部門の人員リソースでビジネスインパクトを最大化させることを目的として、ユーザー部門に公平・平等に関与していくのではなく、Googleのビジネスにおける重要度をベースに社内のステークホルダー(ユーザー部門)を「プラチナ」、「ゴールド」、そして「それ以外」にセグメンテーションし、提供する支援、参画する案件に松竹梅のメリハリをつけていることです。これをGoogleではステークホルダーマネジメントというアプローチにまとめています。
このようなGoogleの調達部門のスタイルですが、端的に言ってしまうと調達のコンシェルジュとでも言えるかもしれません。フルサイズのサービスとしてプロジェクトに調達人員をアサインするケースもあれば、調達のサポートを必要としない部門に対してはあえてサポートはしない、とインタビューでは語られています。
満遍なくトランザクション(P2P)や形式的なS2Cを行うのではなく、関与するビジネスの重要度、そしてその変化やスピード感に合わせ、選択と集中をベースにS2Cを強化する、それがGoogle調達部門の変革の本質であると考えます。
次回後編では、Googleの変革において、必要とされた3つの重要な打ち手についてお伝えします。
◆監修企業
アンカービジネスコンサルティング株式会社
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